「ヒート」とはメス犬の生理を指します。
これをいわゆる「犬に盛りがつく」ことと勘違いしている人もいるようですが、全く異なるものです。
犬の盛りはオス犬が発情している状況をいうのですが、実はオス犬に発情期はないのです。
というのも、オス犬はメス犬が生理によって発情しているのをにおいで感じ取り反応し発情しているのです。
犬の生理のメカニズム
ヒートの時期に交配させると高確率で妊娠するので、妊娠を望まないならばヒート中のメス犬はオス犬から隔離しなければなりません。
ヒート期間の対応を的確に行うためには、犬の生理のメカニズムを知っておく必要もあるでしょう。
犬の生理は人間の女性の生理とは大きく異なります。
そのひとつが、人の受精可能な期間が排卵後24時間だけなのに対して犬は排卵後約4日間は受精が可能であるという点です。
また、人が生理の際に血が出るのは排卵後に子宮内膜が剥がれ落ちるのが理由なのですが、犬の排卵は血が止まってからです。
発情期間は生理中の1週間から10日間程度続くのですが、この発情期間の状態を見てみましょう。

犬の発情前期の状態
陰部から血が出始めて約10日ほど続く期間を発情前期といいます。
生理が始まると日が経つにつれて血の量が増え、トイレの回数も多くなります。
そして、興奮しやすくなったりイライラやそわそわする、言うことを聞かない、わがままになるなど神経質になるほか、逃走してしまう場合もあります。
小型犬なら出た生理の血を自分で舐めとってしまうこともありますが大型犬では血の量が多くなりそうもいかないので、生理パンツや紙パンツなどの犬用生理用品を使うのもおすすめです。
生理が始まったけれども発情しているかどうかを見極めるには、お尻を突いてみるといいでしょう。
発情していればオス犬を受け入れやすいように尻尾を横にずらしますが、発情していなければそんな行動はとりません。
妊娠可能な排卵の準備ができると、生理の血の量は少なく且つ色も薄くなります。
こうなれば排卵が始まり妊娠が可能となるのですが、犬の大きさや個体差にもよりますが、出血からだいたい12、13日、発情を始めてから2~3日程度で排卵が起こります。
妊娠可能なのは排卵の前後5日間で、この期間に交配をするとほぼ妊娠すると考えていいでしょう。

犬の発情後期の状態
排卵が済むと受精能力がなくなるので発情期は終了するので、発情は後期になります。
60日程度の期間が発情後期ですが、中には100日以上継続することもあるのですが、これは人とは違って妊娠しなくても黄体ホルモンの機能が続くことが理由です。
黄体ホルモンの分泌が終われば、だいたい3カ月から半年間は発情休止状態になります。
この期間が最も落ち着いた時期で、その間にメス犬の身体の中では次の生理に向けて卵胞が形成されています。
犬の生理はこのような周期でやってくるのです。

獣医に掛かるケース
はじめてヒート、つまり初生理はだいたい小型犬で生後7か月、大型犬で10か月前後とされています。
1歳半を過ぎても生理がない、あってもその後の生理が不順といったことがあれば獣医の診察を受けることをおすすめします。
生理の時期ではないのに生理のような状態であれば病気、たとえば子宮内膜症などの可能性があるのですぐに獣医に診察してもらうべきです。
また、ヒート中の煩雑さや望まぬ妊娠の危険を避けるために、避妊手術を選ぶ人も少なくありません。避妊手術については犬の避妊手術もチェックしてみてください。
その場合、発情期が終わったのでもう大丈夫と思っている人もいるようですが、その時点ではまだ血管が腫れており手術をすれば出血が多くなり危険です。
もちろんその点に関しては獣医はよく知っているはずなので、手術時期などはよく相談して決めるようにしましょう。

生理用品を使用する
では、ヒート中の犬への対応や対処はどのようにすればいいのでしょうか。
まず、前述したように特に室内飼いの場合は出血が気になるかと思うので、紙パンツや生理用パンツをつけさせることをおすすめします。
犬用のもの以外に赤ちゃん用のおむつや女性用生理用ナプキンなどを応用しているケースもあるようですが、体に合ったものでなければさらなるストレスになりかねません。
ヒート期間は日ごろよりもイライラしているために慣れない紙パンツなどをつけると非常に嫌がったり攻撃的になることもあります。
したがって、ヒートではないときにつけさせて慣らしておくことも必要でしょう。
トイレの回数が増えたりいつもよりきれい好きになることもあるので、トイレシートをこまめに交換するなどの気配りも大切です。
ヒート中の散歩について
ヒートの期間は散歩に出掛けないという飼い主もいるようですが、ヒートは病気ではないのでよほどだるそうだったり出掛けるのを嫌がるのでなければいつも通りに散歩に出かけるほうがストレス発散になって好ましいです。
ただし、散歩中に他の犬と出会わないように注意が必要です。
オス犬に出会ってしまうと発情中なのでお互いなかなか引き離すのが難しくなりますし、メス犬に会った場合も神経質になってケンカになってしまうこともあり得ます。
ですから、犬の散歩の多い時間帯を避けたりあまり犬のいない場所を選ぶことが重要です。
もちろん、知らない犬には近づかないのは当然です。また、散歩の注意点季節や天候にも気を付けてあげてください。
そして、オス犬の飼い主はヒート中のメス犬に出会ったならすぐにその場を離れるようにしましょう。
飼い主同士仲がいいからとおしゃべりに夢中になっているとその後ろで犬同士が交配しているといった事態にもなりかねません。
そうなると慌てて引き離そうとしても大変ですし、無理に引き離すと下手をすれば生殖器を傷つける可能性もあります。
いつも通りに接するけれどもそれなりに気を遣って
ヒート期間中の犬は神経質になったり落ち込んだりと、普段とは性格が変わったかのような様子を見せることも少なくありません。
だからといって過剰な反応や心配をせず、いつも通りに接することで犬は安心できるのです。
しかしながら日ごろとまったく同じように接するのではなく、ヒート中であることを意識して快適且つ心配のないようなケアを心掛けることを忘れてはいけません。
ヒート中の犬への接し方やヒートに関する基礎知識は、メス犬の飼い主だけでなく散歩中にヒート中の犬に出会う可能性のあるオス犬の飼い主はもちろん、さらにはすべての飼い主が知っておくべき事柄といえるでしょう。